癌の種類 × 血液検査

血液検査で発見のきっかけになり得る指標や、経過観察で役立つ腫瘍マーカー等をがん種別に整理。※確定診断は病理(生検)が基本です。

まずは総論(血液だけで「診断」できるのは一部)

血液で拾えること
  • 腫瘍マーカーの上昇(例:PSAAFPCA19-9CEA など)…診断確定ではなく“疑い”や経過の参考
  • 血算・生化学の異常(貧血、白血球・血小板異常、ALP/AST/ALT/γ-GT/ビリルビンCaLDH など)
  • ホルモン・特異的蛋白(カルシトニンサイログロブリンβ-hCGPTH など)
  • 造血器腫瘍の末梢血異常M蛋白(骨髄腫)
限界 単独の腫瘍マーカーでがんの有無は断定不可。胆道閉塞や炎症、良性疾患でも上がることあり。
結論:異常を手がかりに 画像(CT/MRI/エコー)病理(生検) で詰める。

がん種別:血液で役立つ項目(早見表)

がん種 主に使う血液項目 用途(拾い上げ/監視)とメモ
前立腺 PSA スクリーニング/拾い上げの代表。高値でMRI→生検へ。前立腺肥大・炎症でも上昇。
肝細胞がん AFPPIVKA-II(DCP) 肝炎/肝硬変など高リスク群のサーベイに有用。画像と併用。
膵・胆道 CA19-9CEA(補助) 拾い上げよりも進行例の評価/経過で使用。胆道閉塞で偽陽性。
大腸 CEA 診断確定後の再発監視に有用。拾い上げ能は限定的。
CEACA19-9(補助) 経過観察の補助。拾い上げの感度は高くない。
肺(非小細胞/小細胞) CEA(腺)、SCC(扁平)、CYFRA、小細胞でNSE/ProGRP 病型の推定や治療効果判定に補助。拾い上げ能は限定的。
CA15-3CEA 再発・治療効果のモニター。一般スクリーニングには不適。
卵巣(上皮性) CA125HE4ROMAスコア 骨盤内腫瘤のリスク層別や経過に有用。単独スクリーニングは不適。
甲状腺 サイログロブリン(乳頭/濾胞の術後管理)、カルシトニン(髄様) 術後の再発監視や髄様癌の拾い上げに有用。
胚細胞腫瘍(精巣/卵巣/縦隔等) β-hCGAFPLDH 拾い上げ〜治療効果判定まで広く有用。
特異マーカーなし(赤血球増多、肝機能異常を伴う例 血液は補助的。画像で評価。
膀胱/尿路 血液より尿検査(尿細胞診、NMP22等) 血液では非特異。尿検査+内視鏡が中心。
造血器(白血病) 血算(WBC↑↓・芽球)、LDH、尿酸、凝固 血液で強く疑える領域。確定は骨髄検査+遺伝子解析。
リンパ腫 LDH可溶性IL-2R、血算 活動性の目安や病勢評価に補助。確定は生検。
多発性骨髄腫 SPEP/UPEP(M蛋白)、FLCβ2ミクログロブリン、Ca、Cr 血液/尿で拾い上げやすい。骨髄検査・画像と統合。
内分泌・NET クロモグラニンA、ホルモン類(インスリン、ガストリン 等) 機能性腫瘍の拾い上げに補助(偽陽性に注意)。
副腎(褐色細胞腫 等) 血漿メタネフリン/ノルメタネフリン 拾い上げに有用。確定は画像+機能検査。
その他:CRP/ESR は炎症指標として非特異的に上がります。ALPは肝胆道や骨転移で上昇することがあります。

使い方のコツ(実務メモ)

① まずは全体像:血算+生化学+目的別マーカー
  • 血算:貧血、白血球/血小板異常、芽球の有無
  • 生化学:AST/ALT、ALP、γ-GT、T-Bil、Cr、Ca、LDH、尿酸
  • 目的別:PSA(男性50歳〜の説明付き検診/症状時)、AFP/PIVKA-II(肝疾患ハイリスク)、CA125/HE4(骨盤内腫瘤評価)など
② 上がった時:単独で決めない
  • 胆道閉塞・炎症・良性疾患で偽陽性あり(例:CA19-9、CEA)
  • 繰り返し測定のトレンド+画像(US/CT/MRI)で評価、必要なら生検
③ 経過観察:同じラボ・同じ条件で
  • マーカーは検体条件・測定法でブレます。同一施設/同条件での縦比較が基本。

補足・注意

本表は一般向け整理です。自分の数値(例:PSAや腫瘍マーカー)をどう解釈するかは主治医に相談してください。症状や画像、病理所見を統合して判断します。
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