治療抵抗性高血圧を防ぐ
「薬を3種類以上使っても目標に届きにくい」状態を作らないための実践チェックリスト
まず定義:通常、①適切な測定と②生活改善を行い、③作用機序の異なる降圧薬を3剤(利尿薬含む)適正量でも 家庭血圧や診察室血圧が目標未達、または4剤以上を要する状態を「治療抵抗性高血圧」と呼びます。防ぐ鍵は「疑似抵抗性を除く→原因を絞る→生活×薬物の最適化」です。
①「疑似抵抗性」をつぶす(ここから)
測定精度
- 上腕式の日本/国際基準適合機を使用(手首式は避ける)
- 朝:起床1時間以内・排尿後・朝食前・服薬前、座位1–2分安静→2回測定の平均
- 夜:就寝前に同様に2回平均
- 前3時間は激しい運動/カフェイン、前30分は喫煙/入浴/飲酒を避ける
- カフは心臓の高さ、足は組まない・背もたれ/腕置き使用
→ 正しい家庭血圧で「白衣高血圧」「仮面高血圧」を見抜く
服薬アドヒアランス
- 飲み忘れ対策:1日1回化、ピルケース、スマホリマインド
- 自己調整・自己中断をしない(副作用は自己判断で止めず医師へ)
- 容量が最適かを確認(最大量近くまで調整できているか)
妨げる薬/食品
- NSAIDs(痛み止め)、一部去痰薬/鼻炎薬の交感神経刺激薬
- ステロイド、免疫抑制薬、エリスロポエチン等
- 甘草(グリチルリチン)/カンゾウ、ブラックリコリス菓子、エナジードリンク、アルコール過量、塩分多い加工食品
装置と生活
- 睡眠不足・いびき/無呼吸(後述)
- 過剰塩分、体重増加、飲酒、ストレス、運動不足
②「二次性高血圧」を見逃さない(疑えば受診)
| 手がかり | 考えられる原因/対応の目安 |
| 若年からの高度高血圧・家族歴強い低K血症 |
原発性アルドステロン症(MRAが有効なことあり)。専門受診でスクリーニング。 |
| 夜間いびき・日中の眠気・肥満 |
閉塞性睡眠時無呼吸(CPAP等の治療で改善)。睡眠検査を相談。 |
| 腎機能低下・蛋白尿 |
慢性腎臓病(利尿薬調整、食塩管理が重要)。腎臓内科へ。 |
| 甲状腺異常、クッシング、褐色細胞腫などの症状 |
内分泌性高血圧を鑑別。専門医へ。 |
| 腹部血管雑音、片側腎動脈狭窄の疑い |
腎血管性高血圧の評価を。 |
③生活の最適化(抵抗化させない土台)
食塩
- 目安:食塩 6 g/日以下(できれば4–5 g)
- 加工品(漬物・汁物・麺つゆ・カップ麺・ハム/ベーコン)を控え、薄味に慣れる
- だし・柑橘・酢・香味野菜・発酵の旨味で代替
DASH型+和食
- 野菜・海藻・きのこ・豆類・果物(腎機能低下時はK過多に注意)
- 精製度の低い穀類、魚、低脂肪乳製品、ナッツを適量
- 飽和脂肪・砂糖・超加工を減らす
体重・運動
- 目安:BMI 18.5–24.9、腹囲の減少を狙う
- 有酸素:週150分(速歩等)+レジスタンス運動 週2–3
睡眠とストレス
- 7–8時間の規則的な睡眠
- 就寝前アルコール頼みをやめる、カフェインは夕方以降控える
- 呼吸法・瞑想・入浴・日光で自律神経ケア
飲酒・喫煙
- 飲酒:可能なら休肝日、最大でも純アルコール 男性20 g/日、女性10 g/日を超えない
- 喫煙は完全禁煙(血圧スパイクと動脈硬化を防ぐ)
五箇山×発酵のヒント
- 減塩でも旨い:昆布・椎茸だし+酢+柚子/山椒で塩分控えめ
- 野草の活用:ヨモギ・スギナなどは「香り・食物繊維」の面で◎(治療効果を謳わず、腎疾患や薬との相互作用がないかは医療者に確認)
④薬物療法を“効かせる”基本設計(医師と相談)
- まずは作用の異なる3剤(例:ACE阻害薬/ARB+カルシウム拮抗薬+利尿薬(サイアザイド様:インダパミド/クロルタリドン等))を適正量で。
- なお、心不全・腎疾患・糖尿病などの合併で選択が変わるため、個別最適が前提。
- 3剤で不十分なら、ミネラルコルチコイド受容体拮抗薬(スピロノラクトン等)が第4選択肢の候補になることが多い(高K血症や腎機能は厳密管理)。
- 夜間高値が主体なら、医師判断で一部薬剤の就寝前内服に変更する戦略が取られることも。
- 副作用(浮腫、咳、頻尿、めまい、乳房痛/高Kなど)は自己中断せず必ず相談。
⑤家庭でできる「週次ルーチン」
- 血圧カレンダー:朝夕の平均値を週1で集計し、傾向をメモ
- 塩分チェック:汁物は1日1回まで・外食時はソース別添え
- 運動ログ:合計150分/週をクリアしているか
- 睡眠:いびき・無呼吸の指摘が出たら受診メモ
- 体重:週0.2–0.5 kgペースで緩やかに減量
受診の目安(迷ったら安全側に)
- 上腕計で180/120 mmHg以上+頭痛・胸痛・息切れ・麻痺・視覚異常 → 救急受診
- 家庭平均が135/85 mmHg以上(多くの目標の目安)や、治療中に上昇傾向 → 記録を持参して受診
- むくみ/倦怠感/動悸/めまいなど副作用疑い → 早めに相談