血液検査で分かる(示唆される)がんの種類
腫瘍マーカー・リキッドバイオプシー(ctDNA/CTC)など、血液検査で得られる情報の整理
要点(短く)
・血液検査で「示唆」できるがんの種類は複数ありますが、単独で確定診断はできません。所見があれば画像検査や生検を行います。腫瘍マーカーは主にスクリーニング・治療効果や再発のモニタリングに用いられます。
・高度な血液検査(ctDNA/リキッドバイオプシー)は遺伝子変異の解析や治療薬選択、治療中の変化検出に役立ちます(ただし適応・保険適用は検査による)。
参照:国立がん研究センター(腫瘍マーカー解説)、NCC解説、FDA/公的解説等。1
主な腫瘍マーカー と 関連がん(代表例)
消化器・腹部系
| マーカー | 示唆されるがん(代表) |
|---|---|
| CEA | 大腸がん、胃がん、膵・肺などでも上昇し得る |
| CA19-9 | 膵臓がん、胆道がん、消化管系 |
| AFP(αフェトプロテイン) | 肝細胞がん、胚細胞腫瘍 |
| PIVKA-II / AFP-L3 | 肝細胞がんの補助指標 |
婦人科・乳房系
| マーカー | 示唆されるがん(代表) |
|---|---|
| CA125 | 卵巣がん(進行例で高率)、卵巣以外の良性疾患でも上昇 |
| CA15-3 / CA27.29 | 乳がんのモニタリング(診断目的には限定的) |
泌尿器系
- PSA:前立腺がん(スクリーニングや診療で使用)。
- hCG・AFP:男性で胚細胞腫瘍(精巣腫瘍)を疑う際に必須の検査。
肺・扁平上皮など
- SCC(扁平上皮由来のがんで上昇)→ 食道・肺(扁平上皮)・子宮頸など。
- CYFRA / NSE / ProGRP などは肺がんのサブタイプ判定やモニタリングで用いられることがある。
(出典:国立がん研究センターの腫瘍マーカー一覧を基に簡潔化)2
高度な血液検査(リキッドバイオプシー・ctDNA等)
何ができる?
- 血中の循環腫瘍DNA(ctDNA)や循環腫瘍細胞(CTC)を解析し、腫瘍の遺伝子変異や耐性変異を検出して治療方針の決定を支援。
- 治療効果のモニタリングや早期再発検出の可能性がある(研究・実臨床で急速に発展)。
ただし、検査の限界や感度・特異度、保険適用や適応は検査種類・国によって異なります。FDA承認の血液ベース遺伝子検査(例:Guardant360, FoundationOne Liquid CDx 等)もあり、臨床で利用され始めています。3
臨床での使われ方(ポイント)
- 診断の補助・スクリーニング:一部マーカー(例:CA125やPSA)は特定状況で診療上の指標となることがあるが、単独で確定診断には使わない。画像検査・生検が必須。4
- 治療効果・再発モニタリング:腫瘍マーカーは治療中の変化や再発の早期発見に使われることが多い(個別のがん種・マーカーごとに有用性が異なる)。5
- リキッドバイオプシー:遺伝子変異解析で標的療法の選択や耐性機序把握に利用されるが、陰性でも腫瘍が存在しないとは言えない(感度の制限)。6
注意点(必読)
- 腫瘍マーカーが高値 = がん ではありません。炎症や良性疾患、喫煙、年齢などで上昇することがあります。
- 正常値でもがんが存在する場合があります(偽陰性)。
- 目的に応じて、どのマーカーをどの頻度で測るかは専門医の判断を仰いでください。
よくある用途(例)
- PSA:前立腺がんスクリーニング・治療効果判定
- CEA:手術後の大腸がん再発チェック
- CA125:卵巣がんの経過観察(単独でスクリーニング目的は慎重)
- ctDNA:治療薬選択や耐性検査、臨床研究での早期再発検知
参考・参照(抜粋)
- 国立がん研究センター「腫瘍マーカー検査とは」および各がん種の検査ページ。7
- FDA/米国でのリキッドバイオプシー承認に関する解説(Guardant360, FoundationOne Liquid CDx 等)。8
- 米国がん協会(American Cancer Society)およびレビュー論文:リキッドバイオプシーの現状と課題。9
※ 本HTMLは一般向けの整理です。個別の検査適応・保険適用・結果解釈は受診先の医療機関にご相談ください。