前立腺癌の骨転移|治療方法

目的:痛みの制御骨関連事象(骨折/脊髄圧迫等)の予防腫瘍制御生活の質の維持
病期は大きく mHSPC(転移性ホルモン感受性)mCRPC(去勢抵抗性) に分け、全身治療+局所対症療法を組み合わせます。

病期別の基本戦略

病期基本強化(推奨例)
mHSPC
(ホルモン感受性)
まず ADT(アンドロゲン抑制:LHRHアゴニスト/アンタゴニスト or 外科的去勢) ADTに追加
AR標的薬(アビラテロン+ステロイド、エンザルタミド、アパルタミド、ダロルタミド)
ドセタキセル(症例選択)
・一部は三剤併用(ADT+ドセタキセル+AR薬)
mCRPC
(去勢抵抗性)
去勢状態(テストステロン抑制)を維持しつつ、作用機序の異なる薬剤へ切替/追加 AR標的薬(未使用/交替)
化学療法:ドセタキセル/カバジタキセル
PARP阻害薬BRCA1/2等HRR変異で有効性
放射性治療薬ラジウム-223(骨症状主体・内臓転移なしで適応)、PSMA標的放射線療法(ルテチウム177-PSMA 等;施設/適応による)
※適応可否・保険適用は時期/地域/施設で異なります。主治医と最新情報をご確認ください。

全身治療(腫瘍制御の主軸)

カテゴリ代表例ポイント
アンドロゲン抑制(ADT) LHRHアゴニスト/アンタゴニスト、外科的去勢 前提治療。副作用:ホットフラッシュ、筋力低下、骨量減少、代謝異常など
AR標的薬 アビラテロン+ステロイド、エンザルタミド、アパルタミド、ダロルタミド mHSPCでの早期強化やmCRPCでの切替に有用。重複機序の連続使用は効果低下に注意
化学療法 ドセタキセル、カバジタキセル 高症候性/高腫瘍量やAR薬抵抗例で。骨髄抑制・末梢神経障害など副作用管理を
PARP阻害薬 オラパリブ、タラゾパリブ など BRCA1/2等HRR遺伝子変異で効果。遺伝学的検査と保険/適応確認が必要
放射性治療薬 ラジウム-223、PSMA標的(ルテチウム177-PSMA 等) ラジウム-223:骨転移の痛み/骨イベント抑制(内臓転移なしのmCRPC)。
PSMA標的:PSMA集積例で全身に投与可能。施設/適応・前治療要件あり
⚠️ラジウム-223+アビラテロンの併用は骨折増加の報告あり。必要時は骨修飾薬の併用と慎重な適応判断を。

骨転移そのものへの対策(骨合併症の予防/痛み軽減)

骨修飾薬要点
デノスマブ(RANKL阻害薬) 骨関連事象(骨折・脊髄圧迫・照射/手術)のリスク低減。
低Ca血症対策にCa/VitD補充、投与前に歯科チェック(顎骨壊死対策)。
ゾレドロン酸(ビスホスホネート) 同上。腎機能で用量/投与間隔調整。水分管理と腎機能モニタ。
局所治療目的/適応
外照射(EBRT/SBRT) 疼痛緩和・破壊的病変のコントロール。単回 or 分割照射。脊椎/骨盤など痛み強い部位に。
整形外科的固定 病的骨折/切迫骨折でステント/固定・減圧術。多職種連携(放射線・整形・泌尿器)。
疼痛コントロール要点
薬物療法 WHOラダー:NSAIDs → 弱オピオイド → 強オピオイド+補助薬(ステロイド、骨膜痛に有用な薬剤など)。便秘・悪心等の副作用対策を併用。
支持療法 理学療法/装具、転倒予防、温熱/冷却、睡眠・不安対策。

治療選択とモニタリングのヒント

① 画像・検査で全体像を把握
  • 画像:骨シンチ、全身CT/MRI、必要に応じてPSMA PET
  • 血液:PSAトレンド、ALP、LDH、Hb、Ca、腎機能。
  • 遺伝子:BRCA1/2/HRR変異の有無(PARP阻害薬の適応)。
② 併用・順番の考え方
  • mHSPCADT+AR薬中心に強化、症例によりドセタキセル追加。
  • mCRPCでは前治療と耐性機序を踏まえ、作用機序を変える(AR薬↔化学療法↔放射性治療薬)。
  • 骨症状が強い/骨イベントリスクが高い場合は骨修飾薬を早期から検討。
③ 生活・骨健康のケア
  • 骨密度(DEXA)評価、カルシウム 1,000–1,200mg/日ビタミンD補充。
  • レジスタンス運動/バランス訓練、禁煙、節酒、体重管理。
  • 顎骨壊死予防のため、骨修飾薬開始前に歯科評価

今すぐ受診すべき緊急サイン

脊髄圧迫が疑われる症状新規/増悪の強い背部痛、下肢のしびれ・脱力、排尿/排便障害 → 早急に救急受診。ステロイド投与+緊急画像・減圧/照射を検討。
高カルシウム血症倦怠、食欲低下、吐き気、意識変化 → 点滴/補正が必要。
病的骨折/切迫骨折突然の激痛、荷重不能 → 画像評価・固定/手術。

補足・注意

本ページは一般向けの整理です。適応・用量・副作用対策・保険適用は時期/地域/施設で異なります。
治療は必ず主治医(泌尿器科/腫瘍内科/放射線治療科)と相談して決めてください。
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