ダビンチ(ロボット支援)前立腺全摘(RARP)

手術の流れ・合併症・機能回復の目安・再発率・術後フォローを一括で確認

低侵襲腹腔鏡尿禁制性機能PSAフォロー生化学的再発

概要(まずここから)

ダビンチ手術=ロボット支援下根治的前立腺全摘(RARP)。腹部に小切開を置き、前立腺と精嚢を摘出し、膀胱と尿道を縫い直す根治治療です。日本 でも標準的に実施され、保険適用(2012年〜)。低出血・短期滞在・早期回復が期待されます。 [oai_citation:0‡PMC]

適応の目安

手術の流れ(代表例)

  1. 全身麻酔 → 腹部にポート挿入 → 拡大視野で前立腺・精嚢を切除
  2. (可能なら)神経温存を考慮して切離
  3. 膀胱尿道吻合 → ドレーン/尿道カテーテル留置

国内データでは、RARP普及に伴い出血量や入院期間の短縮が報告。早期リハビリ導入で在院日数短縮の報告もあります。

入院〜退院の目安

入院中

  • 術翌日からの離床・歩行練習
  • 尿道カテーテル:通常 7〜14日前後で抜去(施設差あり)
  • 骨盤底筋(ケーゲル)訓練を早期開始

早期リハで在院短縮の報告。

退院後(一般的な目安)

  • 軽作業:1〜2週間
  • 重労働・激しい運動:4〜6週間以降で主治医判断
  • 性機能リハ(PDE5阻害薬、陰圧式補助、カウンセリング等):術後早期から検討

合併症(主なもの)

分類内容・備考
排尿尿失禁(くしゃみ・運動時/持続)、尿道吻合部狭窄など。AUAガイドラインは術後尿失禁や性的興奮時失 禁の説明を推奨。
性機能勃起機能低下(神経温存の有無、年齢、併存症で差)。術後の体系的リハが推奨。
その他出血、感染、リンパ瘻(拡大郭清時)、静脈血栓など(頻度は施設・リスクで変動)。総論レビュー参照。

機能回復の目安(尿禁制・性機能)

再発とは?(定義とフォロー)

術後はPSA測定で再発(生化学的再発:BCR)を評価します。一般に術後PSAが0.2 ng/mL以上で2回連続上昇した場合などをBCRとみなす伝統的基準が広く用いられ、BCRの層別化と対応が近年の指針で整理されています。

フォロー頻度の一例: 術後2年までは3–6か月毎、以降は6–12か月毎にPSA(施設方針による)。

再発率(目安のレンジ)

再発率は「術前リスク(低・中・高)」「病理(断端陽性など)」「PSA動態(倍加時間)」で大きく変動しますが、総説では根治治療後の約3人に1人がBCRを経験するとされます(全体像の目安)。

指標代表的な成績(文献の一例)補足
10年BCR非発生率(全摘コホート) 低リスク ~85%、中リスク ~82%、高リスク ~69%(=再発はそれぞれ約15%、18%、31%) 開腹全摘の長期追跡だが、リスク別の目安として参照される数値。
RARPの長期BCR 5年以上追跡の単施設報告等で長期成績良好との報告が多いが、施設・時代差あり。 外科チームの習熟・選択バイアスで振れ幅あり。
全体像(治療横断) 根治治療後のBCR発生:約10〜50%の幅(集団・リスク構成に依存)。 ハイリスク成分や断端陽性で上昇。

再発時の治療(サルベージ)

長期アウトカムの俯瞰

退院後の過ごし方チェックリスト

よくある質問(簡潔版)

Q. ダビンチは開腹より「必ず」優れている?
A. 出血・在院・回復の面で利点が示される一方、長期がん学的成績は外科経験や症例構成に左右。治療間比較は患者背景調整が重要。

Q. 再発を下げる工夫は?
A. 適切な症例選択、経験豊富な術者、十分な切除と吻合、必要に応じたリンパ節郭清。病理結果に応じ早期サルベージ放射線を検討。 早期サルベージ放射線とは?
前立腺癌の救済療法(2024年)


Q. 日本での位置づけは?
A. 2012年にRARPが保険適用、広く普及。近年は国産ロボ(hinotori)も臨床・経済面の検討が進む。

専門家と相談する時のメモ

情報は医学ガイドライン・査読論文に基づく概説です。最終判断は担当医とご相談ください。
主要根拠:日本のRARP普及と在院短縮 EAUリスク分類とBCR層別化
BCRの全体像レビュー
10年BCR非発生率(代表例)
機能アウトカム比較(10年)
サルベージ治療の推奨